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『家庭菜園の実際』

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『家庭菜園の実際』

『家庭菜園の実際』は、戦後直後の1946年(昭和21年)に、食糧難時代に自給用野菜を栽培する人向けに出版された書籍です。プロの生産者向けではありませんので、分かりやすい言葉と表現で「栄養週期理論」に基づく栽培方法が解説され、また約40種類の農作物について、栽培管理の方法が解説されています。

目次

Ⅰ:野菜作りの基礎知識
  1:栽培と技術
  2:作物と肥料
  3:肥料の種類
  4:菜園の準備
  5:タネまき
  6:移植
  7:定植
  8:管理
  9:収穫

Ⅱ:野菜作りの実際
  1:根菜類
   ・ダイコン
   ・カブ
   ・ニンジン
   ・ゴボウ
   ・その他のもの
   ・サツマイモ
   ・長イモ
  2:茎菜類
   ・ジャガイモ
   ・菊イモ
   ・サトイモ類
   ・タマネギ
   ・ラッキョウとニンニク
   ・アスパラガス
   ・子持ち花野菜(ブロッコリー)
  3:葉菜類
   ・キャベツ(かんらん)
   ・ハクサイ
   ・その他の葉菜類
   ・ホウレンソウ
   ・チシャ(レタス、リーフレタス)
   ・シュンギク
   ・フダンソウ(夏菜)
   ・ネギ
   ・ニラ
   ・スイセンジナ
   ・ツルナ
   ・ツケナ(松菜)
  4:果菜類
   ・カボチャ
   ・スイカ
   ・キュウリ
   ・マクワウリとシロウリ
   ・ナス
   ・トマト
   ・インゲン
   ・エンドウ
   ・その他の豆
   ・ラッカセイ(落花生)
   ・トウモロコシ

はしがき


旺文社の依頼によって、今回専門家でない人々が、食糧の自給をはかる意味で菜園を作るような場合に、何か役に立つようなものを書いて欲しいということになって、ここに筆を執るのであるが、従来この種の著作はかならずしも絶無ではないように思う。
しかし、そのどれを見ても、あるいはひどく専門的になっていたり、あるいは単にバラバラな栽培上の手段を並べてみたりして、結局、読んだ人が、それをすぐに自分の菜園に応用して何ほどかの成績をあげるというのに、本当の役に立ちそうなものはないように思われる。

それは、今までの蔬菜(そさい)に関する学問というようなものの欠陥が自然に現れてきているのであって、何もいたし方のないもののように思われるが、また、書く人が本当に素人の立場に立って物を考えないか、あるいは自分自身が本当に苦労して作物を作った経験を持たないために起こることであるように考える。

そこで、この本を書くにあたっては、まったく経験を持たない人が、この本を読んですぐにそれをそのまま畑に応用して、即時成績をあげ得るように書いていくつもりである。
したがって、今までの競莱の本の体裁とはたいへん違った形になってくるであろう。
つまり、一つの作物を作ろうとする場合に、その作物を取り扱つた項目だけをよく読めば、そのままそれを実地にやってみることができるように導いていくつもりであるし、また、そのままそれを実際に行えば、かならず昨日までの素人が、おそらく長年の経験を持つ農家の人に負けないか、あるいはそれをはるかに追い越すだけの腕前を発揮できるようになると固く信ずるものである。

つまり、この本を読む人は、まず最初の「栽培の根底知識」(注・本書では「野菜作りの基礎知識」に改題)というところで書いた一般の知識をよくのみ込んでくれさえすれば、一つ一つの蔬菜についての記事はそのまま実行に移して、何も他に考慮することなく栽培を実現することができるようになると考える。

このような意味で、この本は、今までのものとたいへん変わった姿であり、書きぶりであるが、そのことが成功するかしないかということは、それは実現した人たちが実際に体験の上で証明してくれることであろうと思う。

昭和21年1月
大井上康

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復刻にあたって


この本は、今からちょうど60年前、当「日本巨峰会」を創設した大井上康氏(1982~1952年)によって、一般の人向けに書かれました。
大井上氏は、ブドウの品種で有名な「巨峰」を育種し、全国各地に普及させた人として広く知られています。

農学者としての大井上氏の最大の功績は、「栄養週期理論」という、農作物の生理に基づく、少ない肥料で多くの収穫量と高い品質を得るための栽培理論を確立したことにあります。

BSE(牛海綿状脳症)、鳥インフルエンザ、産地偽装問題…。現在、
消費者の食の安全・安心への関心はかつてないほど高まっています。
一方、地球的規模で急速に進む環境汚染。農業においては、土壌の富栄養化、地下水の汚染、河川の汚染等が深刻な社会問題となっています。

こうしたなか、「有機農業」は、環境にやさしい、人にやさしい農法だといわれ、「有機」と名のつく農産物すべてがもてはやされ、ブームとなっています。

もとより、私どもは「有機農業」それ自体を否定するものではありません。
しかし、有機農法であれば環境を汚染しない、あるいは、有機で栽培された農産物のみが、食味がよく、栄養価が高く、安全であるかのように消費者に誇張されていることに憤りを感じます。

なぜなら、農産物の品質の良し悪しは、栽培方法や肥料の種類で決定されるのではなく、農作物が体内に蓄積した栄養素の量と質で決定されるからです。
たとえば、有機質の肥料を施したところで、その肥料が農作物の必要とされる時期に過不足なく吸収されなければ、光合成によって体内に同化蓄積することはないのです。
つまり、有機農業と農作物の品質は比例しないのです。
吸収されなかった過剰な肥料の成分は、環境に負荷を与えます。
「有機」と名のつく農作物を栽培する人も、それを購入する人も、その「自然の摂理」を理解して欲しいと思います。

この本は、「栄養週期理論」に基づいた農作物栽培の基本を学び、「有機農業」に対する正しい理解を深めていただくことを願って復刻しました。

2006年6月
日本巨峰会

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