「栄養週期理論」とは

  栄養週期理論のあらましを以下に記しました。


  栄養週期理論は、在野の研究者であり、巨峰Ⓡブドウの作出者としても知られている大井上康氏が提唱した作物の栽培理論で、栄養週期説とも呼ばれています。

  栄養週期理論が最初に発表されたのは昭和11年(1936年)です。農業専門誌「農業及園藝」の第11巻の4、5、6号の3回に亘って「窒素・燐酸・加里施肥順序の変更が稲及び麦の発育型並に収量に及ぼす影響 (栄養週期説提唱)」というタイトルで発表されました。その後、1945年に栄養週期理論をとりまとめた単行本「新栽培技術の理論体系」が出版されました。この本は、幾度となく改訂を加えながら、現在も日本巨峰会で販売しています。

  栄養週期理論は、簡単に言うと「作物の生育状態や発育段階に応じて、それにふさわしい栄養状態に導こうとする作物栽培理論」です。この理論に基づく栽培方法は栄養週期栽培と呼ばれています。

  作物のたねの時期、芽を出した時期、生長を開始し大きくなっていく時期、果実や穂を実らせる時期、それぞれにふさわしい栄養状態に導くように様々な手を施します(「発育段階に応じた栄養状態参照)。
  発育の状態や段階に応じて様々な対応をしますが、その中でも、施肥は重要な手段の一つと位置付けています。このため、栄養週期栽培では、作物の特性、生育状態および発育の段階などに応じて与える肥料の種類や量を変化させます。一見当たり前のことのように感じる方もおられると思いますが、そのような方法は一般的ではありません。インターネットで作物栽培指針とか作物栽培基準とか入力すれば、国や県の作物栽培の指針や基準が出てきますのですぐに見ることができますが、そのほとんどが、元肥(作物を植える前や生長を開始する前に土に与える肥料)を中心に肥料を与えます。元肥以外には追肥とか補肥として補うこともありますが、肥料によっては元肥だけの場合もあります。また、追肥とか補肥というと足りない肥料を補うとか追加するという感じがありますが、栄養週期栽培では、作物の発育の状態や時期に応じて必要な栄養素は異なると考えていますので、はじめに与えて足りなくなった分を補ったり、追加したりというよりは、発育の段階や生育状態に応じて必要となる栄養素を与えるという視点が強くなります。
  作物の栄養状態に影響を及ぼす要素は、このような施肥だけでなく、植付け密度、耕起、剪定など様々な事柄があります。それらを、生育している作物自身の特性、生育状態および発育の段階などに応じて変えていき、それぞれにふさわしい栄養状態(栄養型)に導き、作物の健康な発育をめざすのが栄養週期栽培の特徴です。作物の栄養状態の指標として注目する事項のひとつに、作物の体内の炭素(C)と窒素(N)の比率があります。体内における炭素と窒素の変化や比率に注意を向けるのは栄養週期栽培の特徴の一つとなっています。

  栄養週期栽培は、「栄養週期栽培の作物観」にも示しましたように作物自身の自律性を尊重し、人間は作物自身が持っている発育の本来の在り方に手を添えてやるという視点が強く、作物の健康に配慮します。それは、結果的に、肥料を減じることになりますし、また、農薬の量も減じることになります。自然農法や有機農法とは異なりますが、肥料や農薬を少なくする低投入型の農業を実践する上では適しており、この栽培方法は環境保全的な性格を持っているといって良いと思います。

  かつて(今でも?)、学問の世界においても栽培の現場においても、栄養週期理論や栄養週期栽培は異端視あるいは無視されてきた経緯がありますが(「 苦難の歴史参照)、当サイトに立ち寄っていただいた方々が興味を持っていただければ幸いです。

《参考文献》
大井上 康. 1936a. 「窒素・燐酸・加里施肥順序の変更が稲及び麦の発育型並に収量に及ぼす影響〔1〕 (栄養週期説提唱)」. 農業及園藝, 11(4):997-1003.

大井上 康. 1936b. 「窒素・燐酸・加里施肥順序の変更が稲及び麦の発育型並に収量に及ぼす影響〔2〕 (栄養週期説提唱)」. 農業及園藝, 11(5):1205-1212.

大井上 康. 1936c. 「窒素・燐酸・加里施肥順序の変更が稲及び麦の発育型並に収量に及ぼす影響〔3〕 (栄養週期説提唱)」. 農業及園藝, 11(6):1463-1474.

大井上 康. 2011.「新栽培技術の理論体系 再改訂版」. 日本巨峰会.
(原著:大井上康. 1945. 新栽培技術の理論体系)


  栄養週期理論や栄養週期栽培を理解・実践する上で適した書籍として、現時点では以下のものがあります。

「栄養週期理論」を理解・実践する上で適した書籍

★『新栽培技術の理論体系』
   (栄養週期理論を展開した最も重要な書籍です。)
★『微量栄養素と施肥設計』
   (栄養週期理論に基づく実践書です。)
★『大井上康 講演録』
   (栄養週期栽培の考え方が記された入門書です。)
★『家庭菜園の実際
   (栄養週期による野菜栽培の一般向け解説書です。)

  それぞれの書籍の内容については、書籍コーナーを参照いただければと思います。

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